2015年11月18日

完成前の新築マンションを買うなど愚の骨頂である 欠陥物件が蔓延する本質的元凶

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2015/11/18 22:30 Business Journal

 横浜市都筑区で三井不動産レジデンシャルが分譲したマンションが傾いていることが公けになって約1カ月。問題は収束するどころか、マンション業界のみならず建設業界全体の問題に波及しつつある。問題の杭打ちを担当した旭化成建材は当初、一担当者個人の「異常な行動」とし、事態の収束を図ろうとしたフシが見受けられる。2005年に発覚した通称「姉歯事件」と呼ばれる構造計算書偽造問題を彷彿とさせる。

 しかし、この問題は一個人の「異常な行動」ではなく、どうやら業界全体に蔓延していた「よくやらかす事象」であることが明らかになりつつある。旭化成建材に続いて業界大手のジャパンパイルでもデータ偽装が発表されたのが事態の深刻さを物語っている。
 
 こうした問題が生じると、多くの場合、関係者は事態の収束を急ぐあまり、原因究明を十分に行わないまま、いい加減な理由をつけて「うやむや」にしようとしてしまう。責任の明確化を避ける動きでもある。肝心なのは問題が起こったとき、まずは被害者と真摯に向き合う姿勢である。今回の問題でも、売り主である三井不動産レジデンシャルは当初、マンションの傾きは東日本大震災によるもので補償対象とはならないとの説明を繰り返したといわれている。元請建設会社である三井住友建設は、下請け業者である旭化成建材からの報告がなかったことに多くの責任があるかのような発言を行った。原因がいまだ特定化されない中ではあるものの、互いが責任を逃れようと曖昧な姿勢を続けることは、今回の被害者のみならず社会全体に強い不信感を抱かせることになる。

 被害者の方々には「致し方ない」ではすまされないが、事象として生じてしまったことは致し方ないこととして、今最も大切なことは、こうした事態がなぜ生じてしまったのか、原因を冷静に分析し、「二度と生じさせない」方法を考えることである。

 今回の事件で再び話題となっているのが、建設業者による「手抜き工事」である。「手抜き工事」自体は今回が初めてではなく、過去にも幾多の事例がある。中には相当悪質な事例も正直あるといわざるを得ない。こうした事例の数々が今回あらためて蒸し返されているが、事例の多くが被害者からみてゼネコンやデベロッパーに対して「事象の原因」を立証することが難しく、問題の根本的な解決になかなかつながらないことである。

 手抜き工事の立証と責任の所在は、「医療事故」に関わる争いと同様、被害者側に専門知識が乏しく、圧倒的に不利な立場から争わなくてはならず、異常に長くかかる裁判の過程で被害者側が「疲れて」「折れて」しまうのが実態だ。被害者となった住民の方々が気の毒なのは、住宅の場合はそれぞれの「生活」や「人生」が時の経過とともに「変化」してしまうことだ。こうした問題がたまたま「発覚してしまった」という認識があり、裁判になっても最後は勝てるといった考えが関係者の間にあるうちは、これからもどこかで同様の過ちが繰り返されることとなってしまう。

●青田売り

 私は今回の問題の根源は、「青田売り」と「ゼネコンによる設計施工の一括受注」にあるとみている。

 「青田売り」とは建物完成前に売買契約を締結してしまう取引形態をいう。日本は戦後、圧倒的に住宅が不足する状態からの出発を余儀なくされた。戦後復興院の試算によれば国内では約420万戸もの住宅が不足する事態の中で、日本住宅公団(現UR)が中心となって住宅の「量的な充足」を最優先してきた。平成バブルまでの時代、住宅はつくれば「売れる」、「早め」に買えば「値上がり」するという環境にあり、人々は早く住宅を手当てしたいがゆえにむしろ積極的に「青田買い」で住宅を確保してきた。

 一方、住宅を供給するデベロッパーにとっては「青田売り」は誠に都合の良いものであった。つまり、契約時に顧客から手付金を収受し、中間金、竣工時残金を受け取ることで、土地取得費、建物建設費の一部に充当することができ、資金繰りや工事期間中の期間金利の負担を軽減できたのである。いわば「買手」と「売手」の利害が一致してきたのが、これまでのマンション業界だったのだ。

 しかし、現代の日本の住宅マーケットは「量的な充足」を終え、「質の充足」を求める時代になっている。にもかかわらず、マンションを購入する消費者は相変わらず、あたかもテーマパークと見まがうようなモデルルームを見学しただけで、自分で「見る」「触る」こともせずに何千万円もするような商品を買ってしまうのだ。そして、まだ更地である現地を見学して自分の住戸が存在することになるであろう空間を見つめて、建物の完成を夢見るのだ。

 こうした売買形態は欧米ではほとんど見ることはない。彼らの常識として家を「青田」で買うなどという行為は、博打でもやっていない限りはあり得ないのだ。

 では青田売りの何が悪いのだろうか。まず、建物完成前に契約をするということは、契約当初から「完成引渡し」について顧客と約束することになる。「3月末引渡し」と契約書で取り交わせば、デベロッパーにとっては3月末の引渡しは「絶対に守らなければならない期限」となる。ここで工期が動かせなくなる。いっぽう顧客とたとえば4000万円で契約書を交わすことで、「売り上げが確定」することとなる。

 したがって、当初想定した建設費の範囲で工事が行われなければ、追加コスト分をもはや顧客に転嫁することはできなくなる。ただでさえマンション事業は純利益率が5%程度の利幅の薄い事業。建設工事中での建設費の上昇は許されなくなる。売り上げが決まって、引渡し日が確定することによって、マンション事業ががんじがらめになる。設計上は問題ない工事であっても、想定外の事態は発生するものである。

 ところが事業の構造上、引き返すことができないのがこの「青田売り」である。どうにも動かせない事業構造のしわ寄せが結果的に「データの偽装」にまで至ってしまうことについては、改めなければならない。

●設計施工の一括受注

 問題のもうひとつの根源が、「ゼネコンによる設計施工の一括受注」である。建物を建設する場合、設計と施工は分離して行うのが世界の常識である。米国では設計と施工の関係を「Police(警察)」と「Robber(泥棒)」で表現する。施工が「泥棒」であるとはまたずいぶんな表現であるが、施工者は放っておくと「悪さ=手抜き」をする可能性があるという「性悪説」に基づいている。設計は常に施工を見張り、設計通りに施工されることを常に監視する。施工側は設計に無理がないか、現場の状況も伝えることで互いに良い建物を建設していく。この良い意味での緊張関係の中で建設が行われるのが、欧米では常識である。

 ところが日本のマンション建設現場の多くが、ゼネコンによる設計及び施工業務の一括受注である。なぜ一括受注なのか。「安い」からだ。設計業務を設計会社に単独で発注をするよりも、一括でゼネコンに発注するほうが業務も効率的になり発注価格も安くなるからだ。マンションは末端の商品価格が決まっているものなので、「一括発注」によって安く効率よく建物を建設して引き渡してしまおうという発想が、ゼネコンへの一括発注につながるのだ。そしてゼネコン側では、この「良い意味」での設計と施工の緊張関係がどうしても甘くなってしまう。同じ会社なので致し方ない。こうした現場の緊張感の緩みが、工期と建設コスト厳守のプレッシャーの中でデータを偽装してまで仕事を片付けようとする体質を生み出しているのだ。
 
 大手デベロッパーが建設する自社所有のビルは、ほとんどすべて設計と施工業者を分離して発注しているはずだ。自社が運用するビルであるから、ゼネコンに勝手にやらせるわけにはいかないからだ。

 この「青田売り」の廃止と「設計・施工の分離発注」を行い、マンションはすべて竣工後の販売にすれば、おそらくこの種の事件はかなり減少するはずだ。

●買わないという選択

 ただし、顧客の側にも覚悟しておくべきことがある。デベロッパー側は建物竣工まで資金が入ってこないので、期間中の金利、工事等のやり直しを含む建設費用のアップ分を含め、すべての費用が最終価格に上乗せされてしまうことだ。また、タワーマンションのような大型物件は資金繰りに余裕のある大手デベロッパーしか供給ができなくなり、結果的にマーケットは大手による寡占化が一気に進むかもしれない。

 しかし、多くの人にとっては一生に一度ないし二度の「大きな決断」で買うマンション。よく見極めて自身の目でしっかりと確かめてじっくり選ぶ、これでよいのではないだろうか。その分の価格アップは、今回のような事件を二度とおこさせないための保険料であると考えることはできないだろうか。高いと思えば買わない選択だってあるのだ。日本には今空き家が820万戸もあるのだから。
(文=牧野知弘/オラガHSC代表取締役)


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posted by 芸能エンタメ和夏 at 23:20 | 国内 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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